矢車 ともさんのレビュー一覧
全てのお話に様々な味がございますが、この御品は。 言葉と流れ、幕切れの美しさ儚さ……夢見心地に身を任せられるのでございます。 どなた様もどうぞ行ってらっしゃいませ。
なんだか巧いのです。 記憶を探る為の様に降る雨、音と色が見える感じ。 色々が倍増の自転車、狙って選ぶ言葉が的確に響いたりして。 少し若返りたい方に、この巧みな疑似体験をお薦めしたいのです。
“虫の知らせ”と言う言葉があります。 良い事も悪い事も運んで来る、厄介な感覚ですが。 この作品では違う物を届けに来ます。 是非、受け取って下さい。
誰もが一つは持っていた、ぬいぐるみや人形。 彼や彼女に付けた名前を、覚えていますか? 大人になってから思えば、随分と安直だったりしますが。 子供心の残酷さが不意に蘇る切ない空行を味わい、思い出しながら。 是非、読んでみて下さい。
「痛かった? ──ここ」 そう言った紅葉ちゃんが、蒼太くんの胸をトンってする動作。 この後の素敵場面に繋がる台詞、景色。 泣けるとか何だとかでは無く、読んでいるのに紅葉ちゃんの指の感触を感じるような、印象的なシーン。 私はここが好きです。 読んだ方それぞれ、好きなシーンが持てる。それ程に全てが綺麗。 そういう作品です。
イジメる側と、イジメられる側。 その両方が書かれていますが。 どちらも普通で、どちらも異常です。 両方の現在と現実を、小説として読んで貰いたい一作です。
タイトルに全てを込めた感を受けました。 全編に渡り、二人の主人公は“vs”、戦い続けています。 二人の対戦相手は、お互いだけではありません。 一番の強敵は、自分の心。 とにかく、アレです。 読めばとにかく、幸せです。
どこからどう見ても、普通な女の子が。 普通じゃない“ちぇんじ”の当事者になると言う、驚きから始まり。 誰もが抱く多少の思春期の興味は何故か、笑えたりして。 そして話が進むにつれ交錯していくのは、過去と現在の優しさ。 様々な感情に揺り動かされながらも、最後に訪れる“想い”は。 実際に文字を追った自分自身に、強く深く響いて来ます。 長い物語ですが。 読んで後悔、それだけは決して。 ありません。
全ジャンルに短編を書くばかしゃちょさん。 笑える作品が多い中、これは女目線のハードボイルドな逸作。 最後の文字まで、一気に読めます。 ナイスな小道具、酒と煙草も外してません。 大人の男女の会話、ラストの描写に、脱帽です。