世の中は　空しきものと　知る時し　いよよますます　悲しかりけり 今は昔。 時は、平安。 尊い身の上を持つにも関わらず、存在を知られてはならない、姫君がいらっしゃいました。 藤、橘、葵の三つの花の御名をもつ方で、花のように可憐で美しく、教養のある、素晴らしい姫君であられました。 彼女は、恵まれていらっしゃったのに、幸せを何一つ手には、出来ませんでした……… 否、 姫君は、人ではなかったのです……… 「嗚呼、何故私は、この世で一番愛した人を、この手で殺めなければならぬか。」 これは、私が聞いた物語で御座います。 いいえ、霊語で御座いましょうや。 ☪︎⋆｡˚✩ 貴方さえいるならば、もし、貴方さえこの手に残るならば、もう、私は何も、望まないのに。 ☪︎⋆｡˚✩ 『夢現物語』の主人公、葵の母や祖母達の物語を、他サイトで書いております。（プロフィールへ）

－私に、何も、くれなかったわね。 浮気者の夫を持つ、私は、彼に殺されてしまった。 あの、穀潰しめが。 私はそれをとても恨んでいる。 そして、あの、哀れになるくらいの馬鹿を、どうしてくれようか……… 私は、きっと、報われない。 永遠に。 愛する人を、無私して、罰した、 愛する人は、恋敵の妹と、駆け落ちした。 愛する人の、弟と結婚した。 誰がこの私を、幸せといえるものか。 過去に、栄華を極めた私が、こうまでも落魄れるなぞ、思えなかった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 『永遠に覚めることのない夢』、 『夢現物語』に登場した、常磐の前尚侍が語る、報われない、辛い過去。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今こそ別れめ。 そろそろ、逝こうか。