- 『恋に落ちる瞬間』をテーマにあなたが思い描く
“ドキドキする恋”を小説にしてください。 - 今回のテーマは『恋に落ちる瞬間』。ピンチの時にヒーローのごとく助けてくれたり、自分だけに優しさをくれたり、意外なギャップの一面を見せてくれたり…。その瞬間は突然かもしれないし、一緒にいるうちに徐々に訪れるかもしれない…と十人十色でしょう。ふたりが出会ったいきさつ、ふたりが惹かれあった理由を、ドラマティックに、あるいはささやかにでも、あなたなりの表現で伝えてください。他人と思っていた人が特別な人に変わる『恋に落ちる瞬間』。ドキドキさせるラブストーリーをお待ちしております。
- 賞金10万円+ベリーズ文庫から書籍化
- 『ウェディングロマンス〜誓いのキスは二人きりで』 水守恵蓮/著
- 賞金5万円+ベリーズ文庫から書籍化
- 『午前0時、あなたと』 夏雪なつめ/著
- 賞金5万円+ベリーズ文庫から書籍化
- 該当作なし
- 賞金3万円+ベリーズ文庫から書籍化
- 『辛口な彼が不機嫌な理由』 紅カオル/著
受賞おめでとうございます!!
作品講評
- 『ウェディングロマンス〜誓いのキスは二人きりで』 水守恵蓮/著
- 憧れの相手と夢のような結婚だけど、結婚してから恋に落ちるという王道設定。にもかかわらずテーマを意識した巧みな展開で、最初から最後まで「ドキドキする恋」が描かれていました。物語は幸せ感満載のタイトルと設定に反して、主人公・萌の切ない心の葛藤から始まります。社内一のイケメン男・響と突然の結婚。しかしお互いの気持ちを十分に確かめ合う時間もなく、それゆえに萌は響に愛されているのかという不安に駆られる毎日を送る。萌の不安な気持ちの裏側で響が抱いていた想い。そしてそこに隠されていた誠実な愛。すれ違うふたりの心情が巧みにからみ合い、これからどうなってしまうのだろう、というざわざわとした気持ちに包まれ、冒頭から終わりまで息つく暇もなく引き込まれ、心揺さぶられました。ラストも期待通りで締めくくられた、ドラマティックラブストーリー。最終選考においては審査員満場一致で大賞決定となりました。
- 『午前0時、あなたと』 夏雪なつめ/著
- オフィスラブでありながら、“レンタル彼氏”という、新しくキャッチーな設定が非常に印象的でした。ふたりの間には『レンタル規約』が存在して、0時を過ぎた時点で「シンデレラ」のように魔法がとけ、赤の他人同士に戻らなければいけない。タイトルにもある“午前0時”が、重要なキーワードとして使われました。そしてそれが“恋に落ちる瞬間”にリンクしているという、テーマを存分に生かした作品となりました。レンタルという制約の中で展開するふたりのジレジレな恋愛。しかもヒロイン・すみれのレンタル彼氏は、社内の上司でもあり、実は御曹司でもあった貴人。内気な性格で人間関係に悩むすみれが、貴人に出会うことで自分に自信をつけ変わっていくという流れは、読者の共感を誘うでしょう。一方で物語が今ひとつ抑揚に欠けているのが残念でした。それは登場人物一人ひとりの心情が深く書き込めていないところにあると思います。もう少し踏み込んだ心情描写を意識すれば、読者をぐっと感情移入させることができるでしょう。
- 『辛口な彼が不機嫌な理由』 紅カオル/著
- ユニークなネタが満載で、パワーがあり、最後までテンポ良く読める作品でした。お気楽OL・杏奈の秘密のアルバイト。それが上司である立花にばれるところから物語は始まります。とっさについた嘘もばれ、彼に見放された杏奈。でもその後、杏奈は汚名挽回をすべく、立花を助ける行動を起こします。そして杏奈はふたたび彼の信頼を取り戻すことができ、ふたりの恋も成就します。本作は爽快なサクセスストーリーで、読後の満足感100%でした。また、バカ正直で怖いもの知らずの杏奈と、いつも冷静でクールな立花という対照的なふたりのやりとりの面白さもこの作品の魅力でした。前回佳作だった著者の再挑戦作がこのような作品だったのは編集部としてうれしいことでした。残る課題は文章の中で荒削りな面が見られた点。たとえば、杏奈が立花に恋した理由などは、もうひと工夫欲しかったところです。物語の筋道、伏線、描写などを一つひとつ丁寧に書き込むと、作品にぐっと説得力が増すでしょう。
全体講評
第4回の開催となりました『ベリーズ文庫大賞』。今回は商業出版の経験のある作家を含むすべての作家の方を対象として募集し、253という多くの作品のエントリーをいただきました。ご応募いただいた作家の皆様、作品を読んでくださった皆様に感謝申し上げます。
審査は、書籍編集部、Berry's Cafe編集部、販売部の計7名で行いました。
今回のテーマは恋愛する上で大切な“恋に落ちる瞬間”。この瞬間を、どう文章で表現するかをテーマに作品に臨んでいただきました。物語の中に、さりげなく“恋に落ちる瞬間”を盛り込んだり、タイトルとからめたり…様々な手法でテーマを表現した作品をご応募いただけました。その中でも重要なのは掲げられたテーマを意識し、そこから自分なりに工夫して表現することです。
以上を踏まえて、改めて今回の選考ポイントは大きく3つあります。
- テーマが自分なりの表現で作品に生かされているか
- テーマである“恋に落ちる瞬間”につながる導線が、しっかりと描かれているか
- “ドキドキする恋”が描かれているか
これら3つのポイントをどれだけ満たされているかが重要ですが、1や2については残念ながら“恋に落ちた”という表現だけで終わった作品も見受けられました。恋愛小説としてはキモにあたるところでもあるので、新作を執筆、あるいは過去の作品を改稿される際に意識してみてはいかがでしょうか。3は“ドキドキする恋、あります”というベリーズ文庫のコンセプトを表した作品かということでも忘れずに意識していただければと思います。
最終選考で残った作品に関しては、これらのポイントを意識し、かつ内容も非常に精度の高いもの多く、審査会はとても盛り上がりました。今回惜しくも賞を逃した方も、次回のテーマ、ベリーズ文庫のコンセプトを理解していただき、今後も果敢にチャレンジいただければと思います。
次回、第5回については、第3回同様、新人限定で行う予定です。
皆様のご応募を、心よりお待ちしております。